5回の約束


  「お腹すいた」
 誰もいない静かな部屋に私の声だけが響く。
 白と黒にまとめられたシンプルな部屋。
 2LDKのリビングには私しかいない。
 私は黒いソファーにうつぶせ寝転がり、何も映っていないテレビをにらんだ。
 時間は……わからない。
 私のいる場所から時計は見れない。
 別にわからなくても支障はないし、私の生活に時間なんてものは必要ない。
 「おなかすいた」
 2度目をぼそりとつぶやいてみる。
 どうせ何も変わらない。そんなことはわかっている。
 なんせこの部屋には私しかいないのだから。
 耐え切れない空腹ではないが、この気持ち悪さには耐えられないし、耐える気などない。
 テレビでもつけようかと手を伸ばしてみるが、あと数p、手が届かない。
 「お腹すいた!!」
 八つ当たりでもするかのように叫んでみる。
 でもやっぱり私以外いない部屋は私の叫びを飲み込むだけだった。
 はやく、はやく、そう思ってはっとする。
 なんで私はあいつの帰りを待っているんだ。
 とっとと5回つぶやいて逃げてしまえばいい。
 「おなかすいた!」
 うつぶせになって足をばたばたさせながらそう叫ぶ。
 顔がソファーに押さえつけられているせいでくもった音しか出ない。
 ――もし、お前が5回願い事をつぶやいても、俺が願い事をかなえられなかったら、俺から逃げていいよ> ――
 ――流れ星みたいに3回じゃないのね――
 ――まあ、そこは俺も人間ってことで多めに見てくれよ――
 そんな約束をしたのはいつだっただろうか。
 つい最近の気もするし、もっともっと前、私が捕まったときだった気もする、それかそんな約束自体なかったのかもしれない。
 「おな……か……」
 でもいつになっても、その5回目がつぶやけなくて、やっぱりあの時3回にしておくべきだったと後悔するのだ。
 いつからこうなってしまったのだろう。
 いつから私は彼に捕まってしまったのだろう。
 考えれば考えるほどわからない。
 最初の私と彼の関係は何だっただろう。
 じゃあ今の私と彼の関係は何なのだろう。
 答えの見当たらない問題が私の頭の中をめぐる、めぐる。

  「ほらよ、腹減ったろ?」
 うつぶせで考え事に浸っていた私の上から彼の声がした。
 少しだけ顔をずらすと、そこにはサラダと小さいお弁当とプリンが入っていた。
 私がゆっくり体を起こすと彼は言った。
 「2日も弁当続いて悪いな。今からスーパー行ってもいいの売ってねえから」
 お弁当をソファーとテレビの間の机に置き、自分の部屋へと着替えに行った。
 私がいるリビングの両脇には部屋が二つあって広いほうが私、少し狭いほうが彼になっている。
 別に私に部屋なんて要らなかったのだけれど、彼はわざわざ私に部屋を与えた。
 絶対に彼のほうが物がおおくて部屋に入らないのに。
 そう思っていると、部屋から彼が入ってきた。
 「さきに食ってればいいのに」
 「今日はシュークリームの気分だったのに」
 少しむっとしながら思ってもいないことを言う。
 自分でも、今日も上出来の演技だ、と思う。
 「いつもプリンじゃないと文句言うくせに」
 スーツからスウェットに着替えた彼がどかっと私の隣に座っていった。
 「でも今日はシュークリームの気分だった」
 「明日かって来てやるからさ」
 「シュークリームがいい」
 「だから明日って」
 「もう4回目なんだけど」
 そういうと彼は勢いよく立って、財布だけ手に持って玄関のほうへ走った。
 その必死な姿に笑いながら、少しうれしくなる。
 自分で買いに行かせておきつつ、遠くなる足音にさびしさも感じる。
 大体、しまった、と思うのは決まって後からなのだ。
 そして、何度も同じことをしてしまう。
 別に、プリンでもよかったかも。
 そう思ってしゅん、となっていると玄関のほうから彼の声がした。
 「今から買いに行くけど、他にほしいものない?」
 「い、イチゴ牛乳!」
 とっさに出てきたものを叫ぶ。
 特に欲しかったわけではないけれど、なにかいる?と聞かれてとにかく答えなきゃと思ったのだ。
 あ、笑われてる。
 決してここから見えるわけではないのに、そんな感じがしてなぜか私自身も笑ってしまった。
 「誰か来ても出ちゃだめだぞ。なんかあったらメールして、飯先食ってていいから。あ、風呂だけ」
 「わかってる!」
 沸かしといて、でしょ?
 何年一緒にいると思ってるのさ。
 まだお腹はすいているし、願い事なんて1つもかなってないのになんだかうれしくて仕方がない。
 サラダは必ず私の好きなシーチキンの入ったやつだし、プリンだって、前すごくおいしかったやつだ。
 まだ暖かいお弁当をあけようと手を伸ばすと、玄関のドアが開く音がした。
 いってらっしゃい、そう声をかけようとしたが
 「5回目、言うなよ!」
 と言う声にかき消され、その直後ドアの閉まる音がした。



 世間から見れば許されることのない、誘拐犯とその被害者。
 たとえ世間が許さなくても、私たちにはそれが唯一の真実。


   ――だから、今日も私は




















         あとがき

  夢現と同じ長編のもうひとつの案だったやつ。
  こっちは話は大体決まってたんだけど、なぜかタイトルだけがどーしても決まらなかったんです><
  今回は番外編?プロローグ?見たいな感じでshortに入れときます☆
  この「彼」と夢現「純」は知り合いだったりしていろいろ絡ませようかなと考えてるので
    長編2作同時進行って言う無茶をしようと思います。
  もう自分でもびっくりですww

  えっと、とりあえずタイトルが決まらないorz
  夢現が長いので短くしたいのですが、短くできない><

  
  
  もうタイトルはおいといて←
  夢現が重くなる(予定)なのでこっちは軽く行きたいですね^^
  前半はww

  これも前半は重くて、途中でだめだ!とおもってダイエット><
  大丈夫かな、リバウンドとかしてないかな><;;

  軽くてふわふわした感じのが書きたいのになかなかかけない現状。
なんだろう、病んでるんだろうか、私。
  

  あ、私のリアルがふわふわしてないからか。
  そういうことか、納得ww←











                                     2011.4.27 coffee















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